この時期の海岸線には生まれたての稚魚が接岸し、それを追って大きな魚もやって来る。
6月30日、大物を待ちかねていた呉屋正喜さんは中部東岸の河口で小魚を追う大きなガーラ(ロウニンアジ)を目撃した。
水深はなんと50センチにも満たない。
20キロは優にあろうかというガーラの体高は、はるかに水深をしのぐ。
ガーラはヒラメのように横向きに泳ぎ、豪快に狩りを繰り返した。
しかし呉屋さんの竿(さお)にヒットすることはなかった。
呉屋さんが次に竿を出したのは4日後の金曜日であった。
すでに3人の釣り人がいて呉屋さんは空いた真ん中のスペースで竿を出した。
釣り座の条件は良くなかった。
しかし呉屋さんは自分にヒットすることを確信したという。
そして、その通りになった。
ヒットしたガーラは死に物狂いに来た道を戻る。
それは多くの場合、岩礁伝いである。
ガーラが走る40メートル先には大きな根があり、逃げる魚はそこを目指す。
横向きだと泳力は落ちるが、根に擦れば40号ハリスはひとたまりもない。
干潮時に海底地形を観察していた呉屋さんはドラグを目いっぱいにしめて走りを止めた。
板張りのきしみ音を聞きながら魚を引き寄せた。
ところで、何人かの釣り人が竿を出す中で、呉屋さんが自分にヒットすると確信した決定的な理由とは、餌である。
その日の河口はさまざまな小魚が観察できたが、その中でも際立ってガーラが好んだ魚を見極めたのであった。
他の人が定番のボラを餌にする中で、呉屋さんはテラピアを選択していた。
その日、ガーラはボラには目もくれず、テラピアを追っていたのである。
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